民泊運営における180日の日数制限について

民泊を運営する場合、まず考えるのが1番ハードルの低いとされる住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出による営業ではないでしょうか。しかし、その参入障壁の低さに伴って悩ませるのが年間で180日までしか営業ができないという日数制限です。

今回はその日数制限の「180日」について考えいきたいと思います。

「180日」の算定とは

住宅宿泊事業は、4月1日正午から翌年の4月1日正午までの1年間に人を宿泊させる日数が180日までと決まっており、1泊を1日としてカウントして算定します。これは実際に人を宿泊させた日数のことで、宿泊者の募集自体は年間を通して行えます。
※長期での宿泊予約が入る可能性もあるため、現況の宿泊日数の実績を把握しておくことが重要です。



では180日の算定方法をふまえて、以下のケースはどうでしょうか。1つずつ見ていきましょう。

最初は旅館業の許可を取得して宿泊事業を営んでいたが、その事業を止めて住宅宿泊事業の届出をした場合、旅館業の宿泊日数も合算されて180日の制限を受けるか?

旅館業の許可を受けて営業していた日数は、住宅宿泊事業の宿泊日数にはカウントされず、住宅宿泊事業の届出をした後の宿泊日数のみ年間180日の制限を受けます。

共同住宅や長屋における複数の住戸や同一敷地内の「母屋」と「離れ」などの複数の棟を一つの届出住宅として届け出る場合、営業日数上限の180日の適用はどのように考えるのか?

年間の営業日数上限180日は、届出住宅ごとに適用されます。そのため、複数の住戸や棟が一つの届出住宅である場合で、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、複数の住戸や棟全体で、180日までしか人を宿泊させることはできません。

事業者が変わった場合でも、180日の制限は引き継がれるか?

年間の営業日数180日の制限は届出住宅ごとに適用されるので、年間の途中で住宅宿泊事業者が代わっても180日のカウントは引き継がれます。届出住宅のそれまでの宿泊実績(日数)については、届け出先の自治体に確認が必要です。

これまで一つの届出住宅として住宅宿泊事業を行っていた住宅を分割して、二つの届出住宅として届出することは可能か。可能な場合、それまでの宿泊実績はどのように扱われるか?

新たに届出する住宅において、それぞれが「住宅」の定義(設備要件、居住要件)に該当するのであれば分割して届出することは可能で、それまでの宿泊実績については、双方に引き継がれます。

これまで二つの届出住宅として住宅宿泊事業を行っていた住宅を統合して、一つの届出住宅として届出することは可能か。可能な場合、それまでの宿泊実績はどのように扱われるか?

新たに届出する住宅において、「住宅」の定義(設備要件、居住要件)に該当するのであれば、統合して届出することは可能です。これまでの宿泊実績については、二つの届出住宅のそれぞれの宿泊日まで確認ができる場合においては、少なくともいずれかの住宅に人を宿泊させた日数の累計が引き継がれます。二つの届出住宅のそれぞれの宿泊日まで確認ができない場合においては、宿泊日数の多い方の宿泊実績を引き継いで差し支えありません。

1つの住宅に複数のグループが宿泊した場合はどうなるのか?

「宿泊日数」は届出住宅ごとに算定することとなっており、複数の宿泊グループが同一日に宿泊していたとしても、同一の届出住宅での宿泊であれば、複数日ではなくて1日と算定します

短時間の滞在だった場合はどうなるか?

宿泊料金を受けて届出住宅に人を宿泊させた実績があるのであれば、短時間であるかどうかや日付を超えているかどうかは問わず、1日と算定されます。

住宅宿泊事業法では年間の営業日数を最大で180日と規定していますが、自治体によってはその地域の実情を反映する仕組みとして条例による住宅宿泊事業の実施の制限を行っており、週末の営業のみ可能にしていたり、営業期間の制限をしているところもあります。

このように上乗せ条例が厳しいところや上乗せ条例がなく民泊を始めやすいところもあるので、エリアが決まっている場合は必ず条例を確認しておきましょう。せっかく良い物件を見つけても、条例によっては民泊を行うには困難なケースもあるので注意が必要です。