民泊をはじめるには【届出の流れと必要書類】
民泊を行う上で、まずは届出住宅の要件と住宅宿泊事業者としての業務についてしっかりと理解しておく必要があります。そして、届出住宅の設備要件と居住要件をクリアすることで住宅宿泊事業者の届出が可能になりますが、今回は届出から施設開業までの流れや届出に必要な書類についてお伝えしていきます。
届出住宅の要件や住宅宿泊事業者としての業務についてはこちらの記事をお読みください。
手続きの流れ
- ①事前相談
- 住宅宿泊事業の開始が具体的になったら住宅の図面などの資料を用意し、担当窓口に事前相談する。「民泊届出チェックリスト」などを活用してください。
- ②必要書類の準備
- 事前相談、関係法令所管部署に相談後、届出に必要な書類を準備する。
(添付資料は発行から3カ月以内のものが必要です。取得時期にご注意ください。)
- ③届出
- 原則として「民泊制度運営システム」を利用しオンラインで行うが、入力した内容を印刷し、書面で提出も可能。
届出方法の3つのパターン
1.民泊制度運営システムから電子申請する方法(オンラインのみ)
2.民泊制度運営システムに届出事項を入力後、窓口で添付書類を届出(オンライン+書類)
3.窓口で届出を行う(書類のみ)
- ④届出番号の受理・標識の発行
- 届出書類の審査が完了し届出が受理、届出番号の交付と標識が発行される。
- ⑤事業の開始
- 事業を行う際は標識を公衆の見やすい場所に掲示する必要があります。
届出前に確認すべき事項
住宅宿泊事業の届出をしようとする方は、届出の前に下記の事項等について確認をしておく必要があります。
届出者が賃借人及び転借人の場合は、賃貸人及び転貸人が住宅宿泊事業を目的とした賃借物及び転借物の転貸を承諾しているかどうか
マンションで住宅宿泊事業を営もうとする場合には、マンション管理規約において住宅宿泊事業が禁止されていないかどうか
消防法令適合通知書を入手 ※届出住宅を管轄する消防に相談してください。
補足
消防法令適合通知書の提出は、住宅宿泊事業法で定められた必須事項ではありませんが、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)において、都道府県知事は消防法令適合通知書の提出を求めることとしています。また、宿泊者の安全確保のためには、住宅宿泊事業の開始直後から消防法令で求める防火措置を遵守することが必要です。事業を行う際の消防法令への適合状況の確認の手続については、事前に自治体にご相談ください。なお、消防法令に適合していない状態で民泊事業を開始した場合、次の危険性がありますので注意が必要です。
・ 火災発生時に宿泊者の安全を守るために必要な設備の設置や防火管理の体制が適切に行われていないため、宿泊者の人命が損なわれる可能性がある。(火災が発生しても、火災警報が鳴らない、消火器がない、避難口がわからない等により、初期消火や避難が遅れる危険性が高い。)
・ 消防用設備等や防火管理体制に不備があり、消防署から行政指導を受けたり、行政処分の対象となる場合が ある。
届出に必要な書類
〇…必要 △…該当する場合は必要
法人 | 個人 | 必要な書類 |
---|---|---|
〇 | 〇 | ①住宅宿泊事業届出書 |
〇 | ②届出法人の定款又は寄付行為 | |
〇 | ③届出法人の登記事項証明書 | |
△ | ④住民票(※住基ネットで本人確認できない場合は必要) | |
△ | ⑤未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書 | |
〇 | 〇 | ⑥届出者(法人については役員)が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明 |
〇 | 〇 | ⑦届出住宅の登記事項証明書 |
△ | △ | ⑧届出住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類 |
△ | △ | ⑨届出住宅が「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 |
〇 | 〇 | ⑩届出住宅の図面 a 台所、浴室、便所及び洗面設備の位置 b 住宅の間取り及び入口 c 各階の別 d 居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積 e 安全措置の内容(非常用照明器具の位置等) |
△ | △ | ⑪届出者が賃借人の場合、賃貸人が住宅宿泊事業に供することを目的とした賃借物の転貸を承諾したことを証する書面 |
△ | △ | ⑫届出者が転借人の場合、賃貸人及び転貸人が住宅宿泊事業に供することを目的とした転借物の転貸を承諾したことを証する書類 |
△ | △ | ⑬分譲マンションなど複数の所有者が存する建物の場合、専有部分の用途に関する規約の写し |
△ | △ | ⑭規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合、管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証する書類 |
△ | △ | ⑮管理業務を委託する場合、住宅宿泊管理業者から交付された書面の写し |
〇 | 〇 | ⑯届出者が欠格事由に該当しないことを誓約する書面 |
〇 | 〇 | ⑰消防法適合通知書の写し |
必要書類の留意事項
- 届出書の添付書類は、日本語又は英語で記載されたものに限ります。英語の場合は、日本語による翻訳文を添付する必要があります。特別の事情で届出書に添付する書類が日本語又は英語で提出できない場合は、その他の言語で記載された書類に、日本語による翻訳文を添付することにより、提出することができます。
- 官公署が証明する書類は、届出日前3月以内に発行されたものとし、官公署から発行された書類(原本)を提出する必要があります(写し等は認められません)
⑥破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明
届出者が外国籍の場合は、以下のいずれかの方法により取得した書類を提出します。
- 届出しようとする者に確認し、当該国において、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しないこと(以下、当該事項という。)を証明する制度がある場合には、当該事項を証する書類
- 届出しようとする者に確認し、当該国に制度が無い場合には、当該事項を記載した書類に、当該国における公的機関の認証を受けた書類
例)アメリカ:アメリカの公証役場または在日大使館・領事館において認証を受けた宣誓供述書(Affidavit) - 日本の公証役場において、当該事項を記載した書類に、公証人の宣誓認証を受けた書類
※ 「書類の作成者自身がその記載内容を真実・正確であると宣誓した上で署名したこと」を認証するものであり、公証人が当該記載内容を証明するものではありません。
※ 書類の記載が虚偽であることを知っているにもかかわらず宣誓したときは、公証人法第60条の5に基づき、宣誓者に対して過料(10万円以下)の制裁があります。
⑦届出住宅の登記事項証明書
登記情報サービスで取得した照会番号でも可能です。
登記情報提供サービスに基づく「照会番号」とは、行政機関等へのオンライン申請・届出時に登記事項証明書の代わりに添付する番号で、申請・届出を受領した行政機関等はこの番号に基づき登記情報の確認を行うこととなります。この番号の有効期間は請求の翌日から100日間となっており、この期間を過ぎると行政機関等は登記情報の確認ができなくなります。
⑧入居者募集の広告その他それを証する書類
例えば以下のようなものです。
- 当該募集の広告紙面の写し
- 賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写し
- 募集広告の写し
- 募集の写真
⑨随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋を証する書類
例えば以下のようなものです。
- 届出住宅周辺における商店で日用品を購入した際のレシート
- 届出住宅と自宅の間の公共交通機関の往復の領収書の写し
- 高速道路の領収書の写し
⑩届出住宅の図面
以下の事項の記載が必ず必要となりますが、必要事項が明確に記載されていれば、手書きの図面であっても差し支えありません。
- 台所、浴室、便所及び洗面設備の位置
- 住宅の間取り及び出入口
- 各階の別
- 居室、宿泊室、宿泊者の使用に供される部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積
- 非常用照明器具の位置、その他安全のための措置内容等、安全の確保のための措置の実施内容について明示
※「民泊の安全措置の手引き」参照
⑬⑭複数の所有者が存する建物の場合の添付書類について
マンション管理規約の専用部分の用途に関する規約の写しが必要になりますが、内容によって追加の添付書類が必要になります。
- 住宅宿泊事業ができる旨の規定がある場合 → 追加の書類は不要
- 住宅宿泊事業を禁止する旨の規定は無いものの、住宅宿泊事業ができる旨が明確に読み取れない場合 → 届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、または、住宅宿泊事業法成立以降の総会及び理事会の議事録等を添付する必要あり
上記は届出に必要な書類の一覧ですが、都道府県によっては提出書類が若干異なり、他の書類が必要になる可能性もあります。事前に相談を行い、必要書類について確認することをおすすめします。