民泊の管理業者について【住宅宿泊管理業者の業務】
2018年6月15日に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行され、個人・法人を問わずに多くの事業者が民泊業界に参入してきています。しかし、民泊を運営する上で、「家主同居型」で居室が6室以上、もしくは「家主不在型」の場合は管理業務を管理業者への委託が必要となってきます。では実際には住宅宿泊管理業者とはどのようなことを行うのでしょうか、お伝えしていきます。
住宅宿泊管理業者の業務つにいて
住宅宿泊管理業者は事業者に対して、「住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置の代行」と「住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置」の実施を義務付けております。
住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置の代行
住宅宿泊事業者が行う住宅宿泊管理業務の代行です。
① 宿泊者の衛生の確保(法第5条) | 各居室には床面積に応じた宿泊者の定員が決まっています。事業者が人数制限を超える宿泊者と契約を締結(宿泊予約)した場合の宿泊拒否の権限などについて、事前に管理業者と委託者との間で決めておくことが望ましいとされています。 |
②宿泊者の安全確保(法第6条) | 住宅宿泊事業法第6条で定められている避難機器設置等(非常用照明器具、避難経路の表示など)の設置は管理業者の責任で行うため、設置や維持保全にかかる費用について事前に管理業者と委託者との間で決めておくことが望ましいとされています。委託者が用意した器具等を利用する場合には、動作等について予め管理業者が確認する必要があります。 |
③外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保(法第7条) | 外国人観光旅客である宿泊者に対して、届出住宅の設備の使用方法に関する外国語を用いた案内、移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供等を行う必要があります。 |
④宿泊者名簿の備付け(法第8条) | 管理業者が住宅宿泊管理業務の委託を受けて行う場合には、管理業者の責任の下に行う必要があり、本人確認の方法は委託者との間で管理受託契約により明確に決めておく必要があります。 |
⑤周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(法第9条) | 管理業者は宿泊者に対して、騒音の防止や火災の防止、ゴミ出しのルールなどの説明のほか、届出住宅固有の配慮事項や注意事項についても委託者にあらかじめ確認しておく必要がありです。 |
⑦苦情等への対応(法第10条) | 苦情や問い合わせの対応が緊急を要する場合には、関係機関への通報の他、委託者に対しても報告することが適切です。また、苦情の対応については、必要に応じてすみやかに現地へ赴くこととし、30分以内を目安にしてます。(状況等によって時間を要することが予想される場合は60分以内を目安) |
住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置
管理を委託する住宅宿泊事業者を保護するための、適切な管理受託契約の締結を目的とした措置です。
①業務処理の原則(法第29条) | 管理業者は常に公正な立場を保持して業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、住宅宿泊管理業の円滑な業務の遂行を図る必要があるものとしています。 |
②誇大広告等の禁止(法第31条) | 業務に関して広告をするときは、以下の事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示(住宅宿泊管理業についての専門的な知識に関する情報を有していない一般の家主を誤認させるような表示)をしてはいけません。広告の媒体は問わず、「誇大広告等」だけでなく「虚偽広告」も禁止しています。 ・住宅宿泊管理業者の責任に関する事項 ・報酬の額に関する事項 ・管理受託契約の解除に関する事項 |
③不当な勧誘等の禁止(法第32条) | 委託報酬に関する事項や責任及び免責に関する事項等の事業者の不利益に直結する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を禁止しています。また、委託者の保護に欠ける以下の行為を禁止しています。 ・委託者が迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為 ・委託者が契約の締結又は更新を行わない意思を示したにもかかわらず執拗に勧誘する行為 ・届出住宅の所在地その他の事情を勘案して、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず、当該住宅宿泊管理業務に係る管理受託契約を締結する行為 |
④管理受託契約の締結前の書面の交付(法第33条) | 管理業者は管理受託契約を締結しようとするときは、委託者(住宅宿泊管理業者である者を除く。)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて書面を交付して説明しなければなりません。 |
⑤管理受託契約の締結時の書面の交付(法第34条) | 管理業者は、管理受託契約を締結したときは、委託者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければなりません。 ・住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号 ・住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅 ・住宅宿泊管理業務の内容及び実施方法 ・報酬並びにその支払の時期及び方法 ・住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項 ・責任及び免責に関する事項 ・契約期間に関する事項 ・契約の更新及び解除に関する事項 |
⑥住宅宿泊事業者への定期報告(法第40条) | 管理受託契約を締結した事業者に対し、管理受託契約に係る住宅宿泊管理業務の実施状況等について、以下の事項を記載した住宅宿泊管理業務報告書を作成し、住宅宿泊事業者の事業年度終了後及び管理受託契約の期間の満了後に報告を行う必要があります。 ・報告の対象となる期間 ・住宅宿泊管理業務の実施状況 ・住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の維持保全の状況 ・住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況 |
その他の業務
名義貸しの禁止
住宅宿泊管理業者は、自己の名義をもって、他人に住宅宿泊管理業を営ませてはなりません。
住宅宿泊管理業務の再委託の禁止について
住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはいけません。
(1)「住宅宿泊管理業務の再委託の禁止」の趣旨について
この規定は、住宅宿泊事業者から委託を受けた住宅宿泊管理業務の全てを再委託することを禁ずるものであり、管理受託契約に住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、再委託を行うことができます。
(2)再委託における責任ついて
再委託先は住宅宿泊管理業者である必要はありませんが、住宅宿泊事業者と管理受託契約を交わした住宅宿泊管理業者が再委託先の住宅宿泊管理業務の実施について責任を負うこととなります。このため、法第25条各号(第11号を除く。)の登録拒否要件に該当しない事業者に再委託することが望ましく、また、再委託期間中は、住宅宿泊管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要です。なお、契約によらずに住宅宿泊管理業務を自らの名義で他者に行わせる場合には、名義貸しに該当する場合があるため、再委託は契約を締結して行うことが必要となります。
(3)再委託の対象範囲について
再委託は住宅宿泊管理業務の一部については認められるものの、全てについて他者に再委託することや、住宅宿泊管理業務を複数の者に分割して再委託して自らは住宅宿泊管理業務を一切行わないことはこの規定に違反します。
従業者証明書の携帯
住宅宿泊管理業者は、従業者(再委託契約に基づき住宅宿泊管理業務の一部の再委託を受ける者を含みます。)に国土交通省令で定める様式の従業者証明書を携帯させなければいけません。住宅宿泊管理業者と直接の雇用関係であっても、内部の管理事務作業のみに従事する人は携帯する必要はありません。また、直接に届出住宅に立ち入り又は宿泊者や委託者と業務上接する者が対象ですが、該当ではないリネンの洗濯のみを行う者や車の運転手等についても従業者証明書を携帯することが望ましいとされています。
帳簿の備付け等
住宅宿泊管理業者は、登録を受けた営業所又は事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、管理受託契約を締結した届出住宅ごとにその管理受託契約の締結日や受託した住宅宿泊管理業務の内容等を記載したものを、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存する必要があります。
- 管理受託契約を締結した年月日
- 管理受託契約を締結した住宅宿泊事業者の名称
- 契約の対象となる届出住宅
- 受託した住宅宿泊管理業務の内容
- 報酬の額
- 管理受託契約における特約その他参考となる事項
標識の掲示
適切な登録を受けた業者であることを外形的に明らかにする必要があるため、登録を受けた営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げる必要があります。
まとめ
管理業者から再委託という形で事業者自らが管理業務の一部を行うことも可能ですが、「住宅宿泊管理業者」の制度についてはしっかりと理解した上で委託する方が適正な民泊施設の運営ができるでしょう。