民泊をはじめるには【住宅宿泊事業法の要件について】

ホテル不足や訪日外国人の増加、宿泊ニーズの多様化への対応として、民泊施設は急速に増加してきました。しかし、住宅宿泊事業法ができる前は旅館業の営業許可を取得する必要があったのですが、一般の住宅で旅館業の許可取得は容易ではなく許可を得ないまま民泊を行うケースが多くありました。このような無許可営業の民泊(いわゆるヤミ民泊)が数多く存在し、騒音等の近隣トラブルが頻発してきました。そこで健全な民泊サービスを図る目的で平成30年に住宅宿泊事業法が施行されたのです。

住宅宿泊事業法では一体的かつ円滑な執行を確保するため、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つの事業者が位置付けられており、それぞれに対して役割や義務等が決められています。

このうちの「住宅宿泊事業者」が民泊の運営者に当たり、年間180日まで届出住宅を利用して民泊事業を行う民泊ホストになることができます。

住宅の要件

住宅宿泊事業法における「住宅」とは、設備要件及び居住要件のいずれも満たす家屋である必要があります。

設備要件

届出を行う住宅には台所浴室便所洗面設備が設けられている必要があります。

  • 必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はなく、同一の敷地内の建物について一体的に使用する権限があり、各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能な状態であれば、これら複数棟の建物を一の「住宅」として届け出ることが可能。(例えば、「浴室のない離れ」と同じ敷地内の「浴室がある母屋」を合わせて一つの「住宅」として届け出る場合)
  • 届出住宅に設けられている必要があり、近隣の公衆浴場等を浴室等として代替することはできない。
  • 必ずしも独立しているものである必要はなく、一つの設備が複数の機能(浴室、便所、洗面設備)を有しているユニットバス等も認められる。
  • 一般的に求められる機能を有していれば足りる。(浴室はシャワーのみでもよくて、便所は和式・洋式を問わない)

居住要件

届出を行う住宅は、次のいずれかに該当する家屋である必要があります。

現に人の生活の本拠として使用されている家屋

特定の人が現在生活している家屋のことです。届出者の住民票の住所がその家屋になっているケースです。短期的に当該家屋を使用する場合は該当しません。

入居者の募集が行われている家屋

住宅宿泊事業を行っている間、売りに出していたり、賃貸の募集をしていたり、人が居住するための入居者募集をおこなっている家屋のことです。入居対象者を限定した募集がされている家屋もこれに該当します。(例えば社員寮として入居希望社員の募集が行われている家屋等)

※ただし、相場よりかなり家賃が高いなど故意に入居者にとって不利な条件で募集しており、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」とは認められません。

随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

生活の本拠として使用されていないものの、その所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用しているような家屋のことです。居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションはこれには該当しません。

随時居住の用に供されている家屋の具体例

  • 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋
  • 休日のみ生活しているセカンドハウス
  • 転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住するために所有している空き家
  • 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家
  • 生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家

その他の留意事項

  • 一般的に、社宅、寮、保養所と称される家屋についても、その使用実態に応じて「住宅」の定義に該当するかを判断します。
  • 住宅宿泊事業に係る住宅については、人の居住の用に供されていると認められるものとしており、住宅宿泊事業として人を宿泊させている期間以外の期間において他の事業の用に供されているものは、こうした法律の趣旨と整合しないため、国・厚規則第2条柱書において本法における住宅の対象から除外しています。
    →宿泊施設として営業しながら、レンタルスペース(時間貸し)の販売は不可能です!

住宅宿泊事業者の要件

以下のいずれかに該当する場合は、住宅宿泊事業を行うことはできません。

(欠格事由)

① 心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通 省令・厚生労働省令で定めるもの

② 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者

③ 本法第 16 条第 2 項の規定により住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から 3年を経過しない者(当該命令をされた者が法人である場合にあっては、当該命令 の日前 30 日以内に当該法人の役員であった者で当該命令の日から3年を経過しない 者を含む。)

④ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に 処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して 3年を経過しない者

⑤ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成 3 年法律第 77 号)第2条第 6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経 過しない者(以下「暴力団員等」という。)

⑥ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代 理人が法人である場合にあっては、その役員を含む。)が①から⑤までのいずれかに 該当するもの

⑦ 法人であって、その役員のうち、①から⑤までのいずれかに該当する者があるもの

⑧ 暴力団員等がその事業活動を支配する者