民泊をはじめるには【住宅宿泊事業者がすること】
(目的)
第一条 この法律は、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。
住宅宿泊事業法第1条
住宅宿泊事業法は事業者が適正な業務運営を行い、宿泊者に対して適切なサービスを提供することを目的として定めています。では、住宅宿泊事業者が担う役割と行うべき業務についてお伝えしていきます。
住宅宿泊事業者の業務
住宅宿泊事業者は、住宅宿泊事業を適切に行うために以下の業務が定められております。
①宿泊者の衛生の確保
- 居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上を確保する
- 届出住宅の設備や備品等については清潔に保ち、ダニやカビ等が発生しないよ う除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う
- 寝具のシーツ、カバー等直接人に接触するものについては、宿泊者が入れ替わ るごとに洗濯したものと取り替える
- 宿泊者が感染症に罹患し又はその疑いがあるときや、その他公衆衛生上の問題を引き起こす事態が発生し又はそのおそれがあるときは、保健所に通報しその指示を受ける
②宿泊者の安全の確保
- 非常用照明器具を設置する
- 避難経路を表示する
- 火災その他の災害が発生した場合、宿泊者の安全の確保を図る
※届出の前に建物の所在地を管轄する消防署等に確認する必要があります。
③外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
外国人の宿泊者に対し以下の事項について、書面の備え付けやタブレット端末への表示等により外国語で案内や説明を行う。
- 「届出住宅の設備の使用方法」
- 「移動のための交通手段」(最寄りの駅等の利便施設への経路と利用可能な交通機関に関する情報)
- 「災害時の通報連絡先」(消防署、警察署、医療機関、住宅宿泊管理業者への連絡方法)
④ 宿泊者名簿の備え付け
本人確認を行った上で宿泊者名簿(宿泊者全員の氏名、住所、職業、宿泊日の記載)を作成し、3年間保存する。また、日本に住んでない外国人宿泊者は国籍と旅券番号を記載する。(代わりに旅券の写しの保存でもよい)
⑤周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
宿泊者に対して、「騒音の防止」、「ごみの処理」、「火災の防止」、「その他周辺地域の生活環境への悪影響の防止」に関し必要な事項を説明する。
「騒音の防止」
大声での会話を控えること、深夜に窓を閉めること、バルコニー等屋外での宴会を開かないこと、届出住宅内は楽器を使用しないことなど
「ごみの処理」
民泊施設からでたごみは「事業系ごみ」に区分され、「家庭ごみ」ではないので注意が必要
「火災の防止」
ガスコンロの使用のための元栓の開閉方法及びその際の注意事項、初期消火のための消火器の使用方法、避難経路、通報措置など
「その他周辺地域の生活環境への悪影響の防止」
性風俗サービスを届出住宅内で利用しないことなど過去の苦情内容を踏まえる
⑥苦情等への対応
周辺住民からの苦情や問い合わせがあった場合、適切かつ迅速に対応する。深夜早朝、宿泊者が滞在していない間も常時対応する必要がある。
⑦住宅宿泊管理業務の委託
以下のいずれかに該当する場合は①~⑥を住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。
- 届出住宅の居室の数が5を超える場合(6部屋以上ある場合)
- 人を宿泊させる間、不在となる場合(生活必需品の購入等、日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除く)
⑧住宅宿泊仲介業者への委託
宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託する。
⑨標識の掲示
門扉、玄関(建物の正面の入り口)など一般の人にも見やすい場所に、下図の標識を掲示する。
⑩都道府県知事への定期報告
届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月の下記の内容について都道府県知事等に報告する
- 届出住宅に人を宿泊させた日数
- 宿泊者数
- 延べ宿泊者数
- 国籍別の宿泊者数の内訳
※定期報告は電子システムを利用して行うことができます。
住宅宿泊事業者にかかる罰則一覧
対象者 | 罰則 |
---|---|
・虚偽の届出をした者 ・業務廃止命令に違反した者 | 6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれの併科 |
住宅宿泊管理業者及び住宅宿泊仲介業者への委託義務に違反した者 | 50 万円以下の罰金 |
・変更の届出をしていない者又は虚偽の変更の届出をした者 ・宿泊者名簿の備付け義務、標識の掲示義務に違反した者 ・定期報告をしていない又は虚偽の報告をした者 ・業務改善命令に違反した者 ・報告徴収に応じない者又は虚偽の報告をした者 ・立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者 ・質問に対して答弁しない者又は虚偽の答弁をした者 | 30 万円以下の罰金 |
事業廃止の届出をしていない者又は虚偽の事業廃止の届出をした者 | 20 万円以下の過料 |
その他
周辺住民への事前説明
住宅宿泊事業の届出を行うにあたり、周辺住民に対し住宅宿泊事業を営む旨を事前に説明しましょう。
※自治体によっては事前説明会を行う必要があるのであらかじめ確認しておいてください。
保険への加入
事業を取り巻くリスクを勘案し、適切な保険(火災保険、第三者に対する賠償責任保険等)に加入しましょう。
届出情報の公表
宿泊者、近隣住民等が住宅宿泊事業の届出の有無について確認することができるようにするため、届出年月日、届出番号及び住所を公表することとしています。
警察への協力等
警察官からその職務上宿泊者名簿の閲覧請求があった場合には、捜査関係事項照会書の交付の有無に関わらず、当該職務の目的に必要な範囲で協力しましょう。
その他留意すべき事項について
住宅宿泊事業法以外の関係法令(消防法、水質汚濁防止法、食品衛生法等)についても手続きが必要となる場合があり、これらの法令を遵守する必要もあります。
まとめ
民泊施設を運営するには届出住宅の管理・運営は当然ですが、宿泊者への対応、周辺住民への配慮、都道府県への定期報告など様々な業務があり、大きな責任が問われます。住宅宿泊事業者としての役割をしっかりと把握し、必要な部分は管理業者に委託するなど宿泊者が安心して過ごせる様にしましょう。