民泊施設でも宿泊者へ食事提供ができるか

一軒家やマンションの1室を利用した民泊施設(住宅宿泊事業の届出住宅)に宿泊する際、基本的には宿泊のみで食事の提供はありません。もし、食品を調理したり設備を設けて宿泊者へ食事を提供する場合は、食品衛生法に基づき飲食店営業の許可を取得する必要があります。そして、飲食店営業の許可を取得する場合には、住居その他食品等を取り扱うことを目的としない部屋や場所と営業施設は区画されていなければなりません。


しかし、厚生労働省は令和3年8月27日、「家主居住型」の飲食店営業に係る施設基準を緩和する内容の通達(家主居住型民泊施設における飲食店営業の許可に係る施設基準の取扱いについて)を発出しました。
通達の概要は下記のようなものです。

  1. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋において行われることを前提としている事業であり、特有の事情があることに鑑み、家主居住型民泊施設を営業場所として、宿泊客に対してのみ食品を提供することを目的に営業許可申請がなされた場合、適切な衛生管理の下、家庭用台所と営業で用いる調理場所の併用等を可能として差し支えないこと。その際、手洗い、便所、更衣場所、床面及び内壁の材質の取扱い等についても併せて配慮願いたいこと。

  2. 各都道府県等においては、上記を踏まえ、関係部局間で十分に協議を行い、必要に応じ、条例改正の検討や施設基準を斟酌する等の弾力的運用を行う等、適切に対応すること。なお、その際、家主居住型民泊施設である旨の確認、照会方法についても予め整理しておくことが望ましい。

  3. 家庭用台所と営業で用いる調理場所の併用等を可能とした場合であっても、食品の安全性の確保の観点から、一般衛生管理やHACCP に沿った衛生管理に係る規定は遵守する必要があること。

これにより、「家主居住型」で宿泊客に対してのみ食品を調理して提供することを目的に営業許可申請した場合は、適切な衛生管理のもと、家庭用台所と営業で用いる調理場所の併用等を認めるなどの飲食店営業許可に必要な施設基準が緩和されることとなりました。ただし、食事を宿泊者に提供する場合はアレルギーや、外国人宿泊者への宗教上の配慮などの特別な要望にも対応しなければならず、しっかりとした知識が必要となるでしょう。

注意事項

実際には都道府県によってこの規制緩和を実施するかどうか判断していくことになるので、管轄の自治体の担当窓口に確認する必要があります。ちなみに福岡県保健医療介護部生活衛生課に確認したところ、福岡県では従来通り「飲食店の営業許可が必要」とのことでした。

宿泊者側から考えると、宿泊施設内で食事をしたいならホテルや旅館を選ぶでしょうし、施設から出て街の雰囲気を感じたいから民泊施設を利用する人も多いと思います。もしも施設所在の自治体が規制緩和をしておらず従来通りに飲食営業の許可を取得する必要がある場合でも、宿泊者自身がキッチンで調理して食べることは可能ですので、近所のスーパー(できれば地元の食材を豊富に取り扱っている)の案内をしましょう。また、近隣の飲食店の情報を伝え、利用してもらうことで地元の活性化となり地域貢献に繋がるかもしれません。