分譲マンションでの民泊は可能か【管理規約について】
使用していない分譲マンションの1室を活用しようと思ったときに考えられるのは、売却や誰かに貸す(いわゆる分譲賃貸)だと思いますが、近年需要が高ぶってきている民泊事業としての活用も選択肢の一つになるかもしれません。ただし、複数の人が同じ建物で生活するマンションという構造上、様々なトラブルが起こる可能性があり、管理規約で民泊自体を禁止しているマンションがほとんどです。今回は分譲マンションで民泊を行う際に確認する「マンションの管理規約」についてお伝えしていきます。
マンション管理規約と区分所有法
マンションで民泊事業を行うには、住宅宿泊事業の届出、旅館業の営業許可、特区民泊の認定の3つの形態があり、それぞれの要件をクリアしていく必要がありますが、そもそもの前提としてマンションの管理規約で禁止されてないことが条件なので、まずは管理規約を確認しなければなりません。
管理規約について
マンションの管理規約とは、複数の住人が一つの棟で快適に生活をする上でのルールのようなものです。分譲マンションのような区分所有の建物は、区分所有法によって、その共用部分の範囲と使用方法、理事会の権利や義務、管理組合の運営についてなどが決められています。
管理規約は居住者の専有部分の使用方法についても一定の範囲で対象になります。専有部分については基本的に居住者の自由ですが、使い方によっては住民全体の生活に関わる場合があるためです。(例えば騒音に関する事項など)
また、マンションの管理規約は全ての区分所有者に対して効力が及び、相続や売買により新たに区分所有者になった者(承継人)や賃借人にも建物等の使用方法に関しては区分所有者と同じ義務を負います。
区分所有法について
(区分所有者の権利義務等)
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
建物の区分所有等に関する法律 第6条1項
(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
建物の区分所有等に関する法律 第30条第1項
マンションの管理規約は「建物の区分所有に関する法律(区分所有法)」に準拠して国土交通省の作成した「マンション標準管理規約」をもとに作成されますが、立地や構造などの環境要因や独自の状況を踏まえ、個々のマンションの実状に応じてルールを定めていきます。
マンションの管理規約における民泊の可否規定
マンション標準管理規約には、通常、用途制限に関する以下のような規定があります。
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
上記を第1項として、規定を追加することで管理規約において民泊を可能にしたり禁止する旨の規約を定めることができます。ここでは「住宅宿泊事業」を例として、以下のように大きく3つのパターンに分けていきたいと思います。
①住宅宿泊事業を可能とする場合
②住宅宿泊事業を禁止する場合
③住宅宿泊事業の可否を使用細則に委ねる場合
①住宅宿泊事業を可能とする場合
住宅宿泊事業を可能とする場合は下記のような規定を追加します。
「2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。」
※特区民泊の認定での民泊も可能にする場合、その使用が可能な旨を含む規定を追加する必要があります。また、旅館業の簡易宿所の営業許可を取得して行う民泊は、旅館営業として取り扱われるので第1項の用途には含まれないと考えられます。可能にしたい場合はその旨を明記しておくことが必要です。
②住宅宿泊事業を禁止する場合
住宅宿泊事業を禁止する場合は下記のような規定を追加します。
「2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。」
※特区民泊の形態での民泊も禁止する場合、その使用を禁止する旨を含む規定を追加する必要があります。また、「区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。」のような規定を置くこともあり得ます。
③住宅宿泊事業の可否を使用細則に委ねる場合
使用細則に委ねる場合は下記の規定を追加します。
「2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。」
※使用細則は管理規約をより詳細に規定したもので、特別議決(3/4の賛成)を要せず通常議決で決めることができ、今すぐ判断できないことは使用細則に委ねるようにしておくことで将来の状況に応じてルールを見直しやすくできます。
また、以下のような規定の場合も考えられます。
民泊に関する規定がない場合
管理規約が改正前の「マンション標準管理規約」のままで、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」との規定しかない場合は、専有部分の用途は限定されてないものと解され、住宅宿泊事業の届出や特区民泊の特定認定の対象になります。
住宅宿泊事業についてのみ規定がある場合
住宅宿泊事業についてのみ可否に関する規定を設けた場合(管理規約に特区民泊の可否に関する規定がない場合)は、特区民泊に係る特定認定の対象となります。
一定の条件での住宅宿泊事業を可能とする場合
以下のようなケースでのみ住宅宿泊事業の民泊を許可する旨の管理規約を規定することもできます。
・住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している住民である、「家主居住型」の住宅宿泊事業に限り可能
・「家主居住型」で、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用している専有部分において宿泊させる場合に限り可能
注意事項
管理規約に住宅宿泊事業に関する定めがない場合は、管理組合に“住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないこと”を確認し、その確認した書類の提出が必要です。また、民泊事業を開始した後に管理規約が改正され、民泊を行うことが禁止された場合は事業を営むことができなくなるため、管理組合に対して必要な対応をとる必要があります。マンションで民泊を行う前には必ず管理規約をしっかりと確認しておきましょう。